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柳田国際特許事務所
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実務情報
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特許明細書の書き方

これは、明細書を作成する弁理士、技術者が、質の高い明細書を作成するための特許出願用の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面を作成する際の心構えと、具体的方法を実務的観点からまとめたものです。

明細書とは

=明細書を書く上の基本的心構え=
明細書は、特許を求める発明の内容を開示することにより、次のような法律的機能を有するものであって、良い明細書を書くためには、その意味を十分に理解することが必要である。

(1) 求める特許の権利範囲を規定する。(契約書的機能)
(2) 発明が特許性を有する根拠を示す。(申請書的機能)
(3) 発明の実施可能性を示す。(実施可能要件充足機能)
(4) 他者の特許取得を阻止する。 (後願排除機能)

契約書的機能とは、明細書の特許請求の範囲は、求める特許の権利範囲(特許発明の技術的範囲)について第三者と契約を交わすことに等しいことを意味するもので、契約書であることから、その表現は法律的に厳しい解釈に晒されるものであることを認識しなければならない。特許請求の範囲以外の部分も、権利解釈に影響することがあるから、特許請求の範囲以外の記載についても、その認識は必要である。

申請書的機能は、請求範囲に規定された技術内容が、従来技術のレベルに比べて十分な進歩性を有するものであることを審査官にアピールすることによって達成される。特許請求の範囲を狭くして権利を取ることは容易であるが、特許請求の範囲を広くして特許を取ることは難しい。言うまでもなく、少しでも広い権利を取得するよう最善を尽すのが代理人の務めであるから、可能な限り広い請求範囲を取得するよう明細書を書くのが望ましい。このとき、その広い請求範囲で規定された発明の特許性を審査官に印象づけることが明細書の重要な役割であって、一見特許取得の困難な発明をその特許性を十分にアピールすることによって特許に導くことが明細書を書く者の使命であり、特許事務所に期待されるところである。したがって、単に技術的内容を説明するだけでなく、特許取得の困難な発明を特許取得に導く明細書を書くよう心掛けることが明細書を書く際の重要な心構えである。

実施可能要件充足機能とは、法で要求されている実施可能要件を満足するように明細書を書かなければならないことを意味する。明細書は、当業者が読んで発明を実施できるように書かなければならない。そうしなければ審査に当たって発明が完成されているかどうかの確認ができないばかりでなく、発明の開示の代償として特許を付与されるという特許制度の趣旨に照らして十分な開示があるとは言えないからである。したがって、広い権利を求めて請求の範囲を広く記載した場合には、その広さを十分にサポートするだけの実施例などの記載をしなければならない。

後願排除機能とは、同様の発明について他人が特許を取得するのを阻止する機能の意味で、同一の発明については、その出願より後に提出された他人の出願が特許されることを、類似の発明(その発明に基づいて当業者に容易に発明できるもの)については、その出願の公開より後に提出された他人の出願が特許されることを阻止することができる。そのため、発明の説明において、自明なことや直接関係ないように思われることでも、後願の可能性のあることについては記載しておく心構えが必要である。

明細書の作成に当たっては、このような明細書の機能を十分に意識した上で良い明細書を書くよう心掛けることが肝要である。

なお、いずれの機能に関しても、その機能を効果的に発揮するためには、明細書は正確に、かつ分かりやすく記載されなければならない。読者はその明細書を頭から順に初めて読むのであることを考え、順序よく、筋を通して理路整然と説明するようにしなければならない。そのためには、書く者が、発明の本質を十分に理解することが肝要である。

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明細書の全体的形式

特許出願の願書に添付する明細書の形式は、発明の名称の次に特許請求の範囲を記載した従前の形式と異なり、明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の4つが別の書類となっており、それぞれに【書類名】明細書、【書類名】特許請求の範囲、【書類名】要約書、【書類名】図面のように書類名を付して、合わせて広い意味での明細書を構成している。

狭義の明細書の発明の名称、発明の詳細な説明および図面の簡単な説明の項は、施行規則で決められた見出しなので、その標記と順序は必ず守らなければならない。発明の詳細な説明の中の小見出しは、発明を順序よく説明するために推奨される標記と順序であり、なるべくこの順序に従うことにする。しかし発明の詳細な説明において何を説明している部分かということが読者に端的に分かるようにするのが目的であるから、必ずしも下記の表現でなくてもよく、他に適当な表現があれば適宜好ましい表現を用いてもよい。例えば、実施の形態の記載が長い明細書においては、どこに何が書いてあるかすぐ分かるように、その中に適宜小見出しをつけるとよい。

【書類名】明細書
【発明の名称】
【技術分野】
【背景技術】
【先行技術文献】
【特許文献】
【非特許文献】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【課題を解決するための手段】
【発明の効果】
【図面の簡単な説明】
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【産業上の利用可能性】
【符号の説明】

【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
【請求項2】

【書類名】要約書
【要約】
【課題】
【解決手段】
【選択図】

【書類名】図面

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明細書の各記載事項について

【発明の名称】
発明の名称は、発明の内容を名詞として端的に表現して、「方法」、「装置」、「システム」、「記録媒体」、「プログラム」等のように表現する。この名称は発明の技術分野を漠然と示すものではなく、発明の内容をある程度具体的に表現するものの方が好ましい。例えば、「検出装置」ではなく「シート先端検出装置」のようにする。

また、発明の名称は、特許請求の範囲の末尾に来る「装置」等の表現と一致させるのが望ましい。方法と物の2つのカテゴリーを含む明細書の場合は、「方法および装置」、「化合物およびその製造方法」のようにする。しかし、必ずしも全てのカテゴリーを網羅する必要はない。特にカテゴリーが多く、発明の名称が長くなる場合は、名称は適当に簡略化した方がよい。

【技術分野】
この項には、発明の属する技術的分野を「本発明は……に関するものである。」のような表現を用いて記載する。特に、発明がある技術分野の中で比較的細かい分野に属するものである場合は「本発明は……に関し、特に……に関するものである。」のように、まず大きな技術分野を記載し、さらにその中で何に関するものであるかをより細かく記載するのが望ましい。

この項の目的は、発明の名称のみでは広すぎて発明の対象が今ひとつ明確ではないから、発明が一体どういうものに関するものであるかを、明細書の読者に簡潔明瞭に一早く知らせることにある。したがって、この項において特に注意すべきことは、ここでは発明の目的や効果には触れず、発明の対象としている具体的技術分野を明確にするということである。

その技術分野が一般に馴染みの薄いものであると考えられる場合には、例えば、特に全く新規な技術に関するような場合には、一旦「本発明はに関するものである」とした後で、さらに「ここでとは……」というように、発明の名称に関する言葉について多少説明を加える方がよい。

【背景技術】

この項には発明の背景となった出願前公知の技術を説明する。特に発明が解決しようとする課題を有する従来技術について説明するが、その従来技術の前提あるいは背景となる技術についても、発明の理解を助けるものがあれば記載するのがよい。

すなわち、発明が生まれる背景には、単純に一つの問題があっただけではなく複雑な従来技術の問題が関連している場合も多いので、そのような場合には、特にそれらの問題点がよくわかるように段階的に従来技術を説明する必要がある。
詳細な説明を避けるために文献名(例えば公報の番号)を挙げるのもよいが、少なくとも発明が解決しようとする課題を読者に理解させるのに必要なことは、文章で説明する必要がある。

【先行技術文献】【特許文献】【非特許文献】
この項には、背景技術の説明で引用した公知文献を、公開公報のような特許文献と本や論文などの非特許文献に分けて、公開番号や書物や論文などを特定する題名や発行/発表年月日等を引用して特定する。背景技術のところでは、番号は引用しないで特許文献1とか特許文献2などのとか表現を用いて引用する。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】
この項には、その発明がなされるきっかけとなった問題点、すなわち従来技術において解決されなければならなかった問題点あるいは解決することが望まれていた点等と、発明の目的について説明する。

特に発明の内容が高度でない場合、あるいは従来技術に比較して進歩性が大きくないと思われる場合には、特許性をアピールするために、従来技術の有する問題点について多少詳細に説明して、従来、この技術においていかに発明の対象が技術的、実用的あるいは工業的に重要なものであったか、また解決することが困難であったか、またその解決に対するニーズがいかに大きくありながら今まで解決されていなかったかというような点について細かく記載する方が望ましい。これによって、その技術の重要性がアピールされ、改良した部分が小さいものであっても、その技術の大きさが評価されると考えられるからである。

この項で特に重要なことは、ここで挙げる発明の課題は必ず本発明において解決される課題でなければならないということである。その課題が本発明によって解決されるものでなければ、ここでその課題を挙げる意味がないからである。

発明の課題とそれを解決する手段は、常に一貫した筋道に沿って説明されていなければならず、この一貫性が欠けていては明細書として全く意味がないばかりか発明未完成あるいは実施不可能として出願が拒絶されることになる。

この項には、さらに、「本発明は……を提供することを目的とするものである。」あるいは「本発明の目的は……を提供することにある。」のような表現を用いて、発明の目的を記載する。ここで発明の目的とされるのは課題を解決することではなく、課題を解決するものを提供することである。その提供されるものは、特許請求の範囲の末尾となる装置あるいは方法であり、その前に修飾語として発明の目的とする効果を要約したような記載を付して、例えば「本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みて、……を……する(ようにした)装置を提供することを目的とするものである。」のような形で記載する。

ここで目的とする内容は、従来技術の項において説明した従来技術の問題あるいは要望から導き出される発明の課題であって、それまでに述べた従来技術の問題点等から離れた内容を書いてはならない。例えば、発明の目的として一般的な表現を用いて、優れた装置とか便利な装置というような表現を用いたり、それまでに述べた問題点とは関係のない課題等を目的とするのではなく、それまでに述べた従来技術の問題点を受けて具体的に「を……する装置(方法)を提供することを目的とする。」というように記載する。

この目的は発明の権利解釈の際に参考とされることが多いので、それまでの従来技術の問題点や要望等と関連して十分に発明を理解した上で記載しなければならない。すなわち、まず最も広い特許請求の範囲に記載された発明によって達成される効果が発明の主たる目的(課題)となるのであって、従属形式請求項に記載された発明や請求範囲には記載されていない実施の形態に特有な効果を目的としてはならない。
なお、この目的の項には提供する発明の構成を記載する必要はないので、構成上の特徴には触れず、目的のみを記載しなければならない。

【課題を解決するための手段】

この項には、発明の構成を記載する。発明の構成とは、発明の課題を解決するために必要不可欠な構成上の要件であり、発明そのものの本質であるので、特許請求の範囲の欄の各請求項に記載された発明に正確に対応した内容でなければならない。

この項の目的は、請求項に記載された事項のサポートを明細書中に確保するとともに、難解な表現の構成要件の意味を明確にし、特に請求項に用いた表現や用語が狭く解釈されないように広く定義しておくことにあると考えるのがよい。したがって、ここには請求項と同じ表現や用語をそのまま用いる一方、その意味合いを、特に狭く解釈されないように説明しておく。そして、実施の形態(狭い)と請求の範囲(広い)とのギャップを埋めて、実施形態のどの構成が請求範囲のどの構成要件に該当するかを明確にするような説明をしておく。

すなわち、請求範囲は権利範囲を表わす法律文書であるという前提から、分かりきった前提を冗長に書いたり、きわめて難解な表現となることが多く、その意味するところ(主旨)が直感的に分かりにくいことが多いので、その主旨を分かりやすく咀嚼して説明するとともに、発明の意味を説明して、請求範囲の用語等が狭く解釈されないように手当てしておくのがこの項の目的であると考えるのがよい。

しかし、この項の記載は権利解釈の際、最重要となるものであるから、不用意に余計な記載をすると後に大きな問題となるので、発明の主旨から離れた余計なことは一切書かないように気をつけなければならない。

具体的には、請求項では権利範囲を意識するため技術的には通常使われないあるいは馴染みの薄い上位概念の言葉が用いられることが多いので、その上位概念の言葉の意味を技術的に正確にしておくよう、この項においてその上位概念の言葉についての説明あるいは定義をする。例えば「ここでAとは、…を意味するものであって、必ずしも aに限られるものではなく、例えばb 、c 等としてもよい。」とか、「ここでAとは、要するに…であればいかなるものでもよい。具体的には、例えばa 、b 、c 等を使用することができる。」のような、その意味の要点を明確にするとともに具体的な例を示すような表現を用いるとよい。

また、この項においては、上記のような上位概念の言葉以外にも、請求項の中で使われている各種の用語の定義(説明)をすることが望ましい。特に請求項に使用される用語は、通常理解される用語の意味よりも場合によっては広くあるいは狭く使用されることも多いので、その用語の明確な定義を後に記載する各実施の形態の内容を意識しながら説明するとよい。

【発明の効果】

ここには、発明の構成(課題を解決するための手段)によって達成される効果を記載する。この発明の効果は、ともすると発明の目的の繰返しになるおそれがあるが、目的の項と効果の項の違いは、目的の項はその主として狙いとするところを示すものであるのに対し、効果の項は発明の構成との関連において、具体的に得られる各種の効果をわかりやすく説明するものであることにある。

すなわち、発明の効果の項においては、なぜその効果が得られるかということを発明の構成との関連においてわかりやすく説明するのが望ましい。例えば「上記のように構成された本発明の装置あるいは方法によれば、……ので、……ことができる。」のように理由を付して効果を書くのが望ましい。

また、発明の効果は、特許を取得するために必要な発明の進歩性を主張し、印象づける上できわめて重要なものであるから、効果は本来目的としていることにとどまらず各種の観点から利点と言えることをできるだけ多く挙げた方がよい。その利点としては、その発明の対象物の本来の機能上の効果が最も望ましいが、その他にもコスト低減、構造簡略化等一般に工業上望ましいとされている派生的効果等があれば、なるべく多く記載する方がよい。ただし、次のような点に注意する必要がある。

この効果の項の記載は、発明の本質に大きく関わるものであるから、ここで記載する効果は請求項に記載された発明の構成によって達成される効果のみに限られなければならないのであって、請求項に記載された構成によっては必ずしも達成されない効果を書いてはならない。そのような効果を書くと、その効果を達成するための構成要件が請求項に欠けているとして、その構成を追加する限定を要求される場合がある。なお、従属形式請求項に記載された発明や好ましい実施の形態によってのみ達成される効果は、決して、「本発明の……によれば」のような表現は用いず、例えば「なお、したときはの効果がある。」のように、なお書きで記載する。そうしないと、その効果を達成するための好ましい構成が、主たる発明の必須要件であると認定される場合があるからである。

なお、発明の効果の記載は、現行法の下においては必ずしも必要ではなく、これを書くことによって、発明の目的が制限的に解釈され、すなわち効果を達成することが目的であるかのように解釈され、そのため権利解釈において権利を狭く解釈される原因となる場合もあるので、特許を取るためには効果は書くほどよいが、権利を広くするためには効果は書かないほどよいということを認識し、効果の記載にあたっては、その両者のバランスを良く考えることが肝要である。

【図面の簡単な説明】

この項には、使用する図面の簡単な説明と、その図面中に示された重要な部材等の符号を記載する。図面の説明は【図1】、【図2】等の次に、「…を示す平面図」「…を示す一部断面図」「…を示す斜視図」のように、その各図面が何を示すどういう種類の図であるかを記載することとする。


ここで使用される図の種類の例としては、例えば平面図、正面図、側面図、斜視図、断面図、垂直断面図、水平断面図、一部断面図、拡大図、一部拡大断面図、展開図、一部切開正面図、分解図、回路図、グラフ、ダイヤグラム、フローチャート等がある。


この図面の説明をする表現としては、その図面が本発明の構成とどのような関係があるかを明確にするのが望ましく、例えば、本発明の一実施の形態による装置の全体を示す斜視図、その装置の?部を詳細に示す拡大図、本発明の他の実施の形態による装置の部を示す水平断面図」のように各図面で示されるものが本発明とどのようなかかわりを持つかを明確にする表現を用いるのが望ましい。

【発明を実施するための形態】

この項の目的は、読者(当業者)に発明の実施を容易にさせるための説明をすることと、もう一つの読者(審査官)に発明の具体的内容を説明すること(実施可能要件を満足すること)にある。ここには、発明を具体的に実施する場合の構成、作用および必要に応じて製造方法、使用方法等を、詳しく説明する。発明の実施の形態とは請求項に記載された発明の内容をサポートするために具体的に示される発明の実施態様のことであるから、一つの実施の形態によって請求項の記載を十分に
サポートすることができない場合には、複数の実施の形態を説明することが必要である。特に、広い権利を求めて請求の範囲を広く記載した場合には、その広さを十分にサポートするだけの実施態様、実施例などの記載をしなければならない。技術内容によっては、例えば機械系の発明には、言葉だけで構造が表現できる場合もあるので、必ずしも実施例を記載しないで言葉で説明するだけでも十分なサポートが可能になる場合があるが、化学系の発明や薬剤あるいは光学レンズ系などの分野では、実験結果、臨床データ、レンズデータなどの実施例が必須になる。

実施の形態には、具体的構造の寸法や重さ等の数値の開示は必要でなく、(数値限定に特徴のある発明の場合は別)発明の構造を図面等によって具体的に示し、発明の思想が十分に理解できるようにするものであればよい。

書き方の順序は、まず構成を説明して次にその作用を説明するようにしてもよいし、構成と作用とを織り混ぜながら説明してもよいが。これら2つの形式のどちらを採用するかは、ケースバイケースで説明しやすい方を選択して決めるのがよい。一般に、機械的構造に関する発明については先に構成を説明し、その後作用を説明し、電気、電子の分野の発明については、構成と作用を一緒に説明することが多い。

この実施の形態の説明においては、図面に示された各部材等の記号を用いながら説明するが、例えば、「1は、2はであり……」のような、単に数字で示された部材を羅列して説明する記載は、構成の説明にはならないので好ましくなく、「1の上に2が固設されており……」のように図面中の符号を付した部材の名称の次に符号を付して構成を具体的に説明していくのが望ましい。

図面は、あくまでも発明の理解を助けるためのものであり、発明の内容は文章で説明するのが原則であることを忘れてはならない。例えば図面上では台形に見える四角形が描かれているからと言って、あとで台形に限定する補正が可能にはならない。台形を意図して描画したのか、作図の不正確さによって矩形が台形に見えているのか明確な区別がつかないからである。

ただし、電気回路についての実施形態の説明の場合にあっては、回路構成を図面を見なくてもわかるほど詳しく丁寧に説明すると明細書が冗長になるので、図面を参照しながら内容が理解できる程度に説明するのが望ましい。ただし、この場合、電気回路は図面を見ればその構成が一目暸然であるからといって、構成の説明を全くしないでその作用だけを説明するのは望ましくない。明細書は、あくまでも発明の構成を説明するものでなければならないから、図面をもって構成の説明に代え、その作用だけを明細書本文で説明しようとするのは許されない。すなわち、電気回路の説明にあっては、作用とともに構成を少しずつ説明しながら進めるのがよい。例えば、「メータAの入力端子Bに一端を接続された可変抵抗Cによって、前記Aの指針の振れ角が調節可能とされており」のように、回路の構成を説明しながらその作用を説明していくと、比較的簡潔に十分な内容が説明できる。

なお、発明の実施の形態の項には各実施の形態ごとにそれぞれ特有の効果がある場合が多いので、その実施の形態特有の効果をその作用の説明の次に付記するのが望ましい。

もう一つ、実施の形態の記載に関して留意すべきことは、明細書は後願を排除する効果を有するものであるということである。すなわち、それには、出願の公開後に出願された他人の後願に対しては記載から容易に発明できるものを排除する、公知文献としての機能があり、出願の公開前に出願された他人の後願に対しては同一発明を排除する先願としての機能があって、後者の機能を果たすためには、後願となり得る発明と同一レベルの記載が必要であるということである。例えば、発明の概念は記載されていても、実施形態レベルの記載が不十分であれば、実施形態レベルの後願が成立してしまうことがあるので、容易に考えつくことは具体的に記載しておいた方がよいということである。具体的には、言葉だけでもよいから、「…としてもよい」「とすることができる」等、具体的な例について広く触れておくのがよい。

【実施例】

この項には、発明を実施した事実を記載する。すなわち、例えば具体的な大きさ、速度、重さ、量、割合、時間等の数値をもって実際に実施もしくは実験した結果を記載する。したがって、文章の時制としては過去形の表現になる。


化学関係の発明の場合には、一般的に実際に行なった実験のデータや製法を記載しなければならない。その実験や製法に使用した材料と、その方法、ならびにその結果を定量的に説明する。


特に、薬剤関係の発明の場合は、製法と投与方法だけでは記載不備になるので、必ず、出願時から、薬効を臨床データをもって、十分に記載しておかなければならない。


また、必要に応じて発明の効果を示すための比較例を実施例と合せて記載することが望ましい。この場合、提供されたデータが、実施例は特許請求の範囲に記載した発明の範囲に入り、比較例は入らないものとなっているかどうかをよく確認する必要がある。

【産業上の利用可能性】

発明が産業上利用することが明確でないときに、その発明の産業上の利用方法、生産方法あるいは使用方法を記載するが、通常は産業上の利用可能性は明らかなので、この記載は必要ない。

【符号の説明】

符号の説明の欄では、「1:基板、2:支柱、3:揺動レバー、…」のように、番号の次に空白をおいてその番号の示す部材名を示すようにする。実施の形態が複数あり、それらの実施の形態に跨って対応する部材に異なった符号が記された場合には、例えば「 1、11、21…カバー」のように複数の番号を並べ、まとめて示すようにしてもよい。


この符号の欄には、請求項に記載された発明の構成要件にかかわる比較的重要な要素については漏れなく記載することが必要であり、発明の要件とは直接関係のない細部の説明に用いられる符号については記載しなくてもよい。


なお、図面には従来技術に関する図面を挙げることはなるべく避けるのがよく、従来技術は図面を用いないで説明し、図面は本発明の構成を示すものだけとするのが好ましい。ただし、従来技術の説明に図面を使っての説明が必要な場合には、図面を用いて従来技術の説明をするのもよい。その場合、発明の内容を最もよく表している図をなるべく図1とし、従来技術を示す図は後の方の図番を付すようにする。

特許請求の範囲について
 
(1)特許請求の範囲の基本的形式

特許請求の範囲には、発明の目的を達成するのに必要かつ十分な構成を、名詞の形にして書く。構成を書くのであって目的や効果を書くのではない。ただし、構成を作用的に記述した方が広く表現できるので、それにより構成が一義的に特定される場合には作用的表現を用いることも許される。 特許請求の範囲は、その発明が物である場合と方法である場合とによって書き方が大きく異なる。
発明が物である場合には、

「A、B、CおよびDからなる(を備えてなる、を含む etc.)

ことを特徴とするX。」あるいは、

「Aと、Bと、Cとからなる(を備えてなる、を含む etc)ことを特徴とするX。」のように複数の構成要素を and で繋ぎ合わせるようにした形式(Combination Style)か、あるいは
「…において、…したことを特徴とするX。」のように「において」の前に発明の前提となる従来技術に相当する構成を記載し、その次に発明の特徴となる新規な構成を記載する、いわゆるドイツ特許に代表される形式(Continental Style, Jepson Style)を用いる。後者の形式は特に発明が従来技術の部分的改良であるような場合に書きやすいが、改良部分が浮き立たされるため、改良が大したものでない印象を与え、特許性をアピールしにくくなる場合には適さない。

また、構成のみでは発明が十分に表現できないと思われる場合、あるいは特に作用を記載することにより発明の特徴がより明確に表現できると考えられる場合には、次のように発明の作用効果に相当する記載を末尾に付加する形式としてもよい。
「A、BおよびCからなり、……することを特徴とするX。」

「…において、…とし、これにより…することを特徴とするX。」 なお、上記Xは原則として、発明の名称と一致させる。

特許請求の範囲の記載は、形式的には発明の構成要件を明確にするように、例えば「A、B、CおよびDからなるX」のように表現するのが望ましいが、このように表現することが困難な場合、あるいは特に、従来技術の改良に係るものであって、その改良に十分な特許性があると考えられる場合には、「においてし、したことを特徴とする。」というような表現を用いてもよい。
また、「AにBを設け、BにCを設け、AとCにD接続したことを特徴とするX。」のように「設け」などを用いて構成をそのまま記載する、日本で古くから用いられている形式を用いることもできるが、このような日本的な表現は、日本語では許されるものの、そのまま直訳したのでは外国で通用するクレームにならないことが多いので、外国出願する可能性の高い出願においては余り推奨できない。
さらに、特許請求の範囲の形式としては、「A、B、CおよびDからなり、前記Aがであり、前記Cがであることを特徴とする。」というように、主たる構成要件を先に列記し、その後にその特徴部分について更なる特徴を規定する方がよい場合がある。これは、構成要件の内容が余りにも複雑で、構成要件を順に列挙すると内容が分かりにくくなる場合に適している。
いずれの場合も、各構成要件をばらばらに列挙するのではなく、構成要件間の有機的結合を明確にしなければならない。そうしなければ、全体の構成が明確に特定されないからである。
発明が方法である場合には、
「……し、……し、……することを特徴とするY方法。」のように、発明を構成する各ステップ(工程)を and の形で繋ぎ合わせる形が望ましい。
この場合には「……し、」の次に「その後」、「次いで」、「これと同時に」のようにステップの順序(時間的前後)を表わす言葉を使うことも場合によっては必要である。
あるいは、「…する工程、…する工程、および…する工程からなることを特徴とする方法。」のような表現でもよい。

(2)特許請求の範囲作成のポイント
特許請求の範囲を作成するにあたっては、まず発明の本質を十分に理解することが必要不可欠であり、特にその発明の目的を達成するための必要十分条件は何であるかを十分に見極め、その必要十分条件のみを簡潔明瞭な表現で書き表すことが大切である。特許請求の範囲は権利を主張する発明の内容を表わす法律文書(第三者に対する契約書)であることから、厳密な表現が必要となり、内容がわかりにくい表現となりがちであるが、解釈に際して意図する発明と違った内容に読み違えられる可能性がない表現を取る限り、表現はなるべく分かりやすいのが望ましい。

使用を避けるべき表現

特許請求の範囲に必要なのは肯定的表現であって、否定的表現は使うべきではない。例えば,「……しない」あるいは「…を有さない」というような要件は使うことができない。なぜなら、これは要件を限定したことにならず、あるもの以外のものすべてを規定するような内容になって発明が特定されないからである。また、特許請求の範囲においては、選択的な表現や不明確な表現を使うことは許されない。選択的表現とは、例えば「または、もしくは、 あるいは」のような選択を表わす接続詞である。また、不明確な表現とは、「等」「約」のように範囲が不明確な表現である。これでは発明が特定されないからである。しかし、選択的表現や不明確な表現であっても概念として大きく一つのことを表わしている場合であって、具体的に一つの用語が使えないために、このような言葉を用いて表わすことは、場合によって許される。例えば、「数または量に応じて」、「ゴム、プラスチック等の弾性材料」がその一例である。

特許請求の範囲の構成要件を記載するにあたっては、その構成要件が本当に必要なものかどうか、その構成要件を表現するのにもっと広い概念の言葉が使えないかどうか等、常に注意して不必要な限定をするようなことがないように気をつけなければならない。特に、発明者は発明を狭く考えていることが多いので、明細書作成者はその要件一つ一つを十分に吟味して上位概念の言葉が使えないかどうか、あるいは不必要な要件がないかどうか、十分に吟味しなければならない。そのためには、発明者が提示している実施の形態から離れて、発明の本質を把握するようにしなければならない。ただし、このときに注意すべきことは、いかに特許的に広いからといっても、従来技術を含むほどまで広げてはならないということである。従来技術を含むように特許請求の範囲に記載された発明は、特許性がないからである。また、技術常識から離れた非現実的なものを含むほどまで広げてはならない。特許は、あくまでも産業上利用できるものを対象とするものであることを忘れてはならない。

曖昧な用語は特許請求の範囲に適さないが、当業者間で定義が明確な用語であれば、細かく説明を付することなく使用してよい。また、適当な用語がない場合には明細書本文中で明確な定義をすれば明確な用語として使用することができる。

特許請求の範囲の記載において、最も重要なことは、発明の構成要件を明確に、かつ十分な広さをもって記載することであって、その形式は発明の内容に関連して表現のしやすいものを選べばよい。特にその表現形式においては、発明の要旨が曖昧にならないように、また表現が必要以上に回りくどくならないように、発明を正確に表わすことを前提として、なるべく簡潔な表現を用いるのが望ましい。

(3)独立形式請求項と従属形式請求項
特許請求の範囲は、1つまたは2つ以上の請求項の形で記載するが、請求項には、形式的な面から、独立形式請求項と従属形式請求項とがある。両者の法律的効果に差はない。

従属形式請求項は、他の請求項に従属する形で記載するもので、従属する対象となる請求項の数は1つでなくてもよく、複数の請求項に従属する場合には、選択的に従属する形式とする。

従属形式請求項は、従属の対象の請求項の中に記載されているある要件を受けて、それを下位概念に限定したり具体的に特定したりするもの、従属の対象の請求項の記載に他の要件を付加するもの、従属の対象の請求項に記載された要件を他に置換するもの、あるいは従属の対象の請求項の全体をそのまま引用するものであって、表現形式としては、その要件Aを受けて「前記Aが…であることを特徴とする請求項1記載のX。」「請求項1記載のXを…に使用したことを特徴とするY。」「さらにBを備えたことを特徴とする請求項1記載のX」のように記載する。

ここで特定する要件は2つ以上でもよく「前記Aが…であり、前記Bが…であることを特徴とする…」としてもよい。
2つの請求項に従属させる場合は「前記Aが…ことを特徴とする請求項1または2記載のX。」のように選択的表現を使用して、複数の請求項に選択的に従属するような表現にする。

3つ以上の請求項に選択的に従属させる場合は、「…第1項、第2項または第3項記載のX。」「…第1、2または3項記載のX。」「…第1項から第3項(の)いずれか(1項)(に)記載のX。」「…第1項ないし第3項のいずれか(1項)(に)記載のX。」のように記載する。

独立形式請求項と従属形式請求項の配列は、先に独立形式請求項を記載し、次いでその後にその独立形式請求項に従属する従属形式請求項を記載する。複数の請求項に従属する従属形式請求項は、従属の対象となる請求項のいずれよりも後に記載しなければならない。

要約書について

要約書は、調査等の便のため、発明の内容を端的に説明したものを明細書とは別に供することを目的とするもので、審査の対象や、権利範囲の解釈の資料としては利用されないこととされている。
したがって、特許請求の範囲の記載に使用されるような、権利範囲の解釈を意識した独特の表現は使用せず、平易な技術的表現を用いることが推奨される。例えば、「前記」「該」「…手段」のような特許特有な用語の使用は極力避け、図中の符号を付した実施の形態の部材そのものを表す用語を用いるのがよい。

悪い例:「該製品は前記搬送手段により搬送され…」

→良い例:「ライター5はベルトコンベヤ8により搬送され…」

要約書は「課題」と「解決手段」に分けて400字以内(数式や化学式も含めて約11行以内)で記載する。 図面がある場合は、最適な1つの図を選択し、その図を参照しながら発明の説明をする。

課題の欄には、明細書中の「本発明は…」、「を提供すること」のような不要な字数を費やす表現を用いず、直接、「…において…する。」のような表現を使う。

例:磁気テープの再生装置においてSN比を向上させる。

解決手段の欄には、選択された図を参照しながらその図に示された実施の形態の要点(発明の要旨を端的に示す部分のみでよい)を符号を使いながら説明する。字数に余裕があれば作用効果にも触れてもよいが、異なる実施の形態や変形例について触れる必要はない。

図面について

図面は、発明の説明の補助として、読者の発明の理解を容易にするために使用するものであるが、図面はあくまでも補助であって、発明の説明の代用とすることはできない。発明は文章をもって明確に記載しなければならない。例えば、図面に四角が描かれていたからといって、後から四角の例に限定する補正は許されない。四角は多角形の一例、あるいは単なる図形の一例という位置付けでしかなく、三角ではなく四角であるという思想が積極的に開示されているとは認められないからである。したがって、発明の思想に関係のあること、あるいは実施の形態として意味のあることについては、図面だけで示さず、必ず文章をもって積極的に記載することが必要である。 

読者による発明の理解を助けるため、なるべく図面を用いることが推奨される。ただし従来技術については、図面がないと説明できない場合を除いて、なるべく図面を用いないで説明する方がよい。明細書および図面は、そもそも特許を求める発明について開示するためのものであって、従来技術を説明するために頁を割くべきものではないからである。


動く動作を持った機械的構造に関する発明の場合には、動きが分かるように、動きの各段階を示す複数の図面を使用するのが望ましい。
複数の異なる実施の形態を説明するときは、それぞれについて図面を用意すべきであって、一つの図面に異なる形態を重ねて示すのは、好ましくない。ただし、全体に比べてごく一部に変形を加える場合などは、変形例を破線などで示して紙面を節約するようにしてもよい。

化学分野の発明で、特に物質や組成物に関する発明の場合には不要なことが多いが、装置を使用するものの場合には化学分野でも必要になる。
符号について


図面には部材を示すために参照符号を用いる。この符号は、同じ部材には同じ符号を用いる。また、同じ符号を2つ以上の異なる部材に使用してはならない。符号としては、数字の他にアルファベットも使用することができる。数字とアルファベットの組合せ(2a,3aやR1,A1など)も使用可能であるが、必要以上に組合せを繁用するのは感心しない。図面中の文字が小さくなったり、読むときに探しにくくなるからである。

実施の形態が異なる場合には、対応する部材でも、符号には異なるものを使用する。特に類似する実施の形態の場合には、対応する部材には対応する(同じではなく、例えば12,22,32のように、似た)符合を用いると、対応関係が理解しやすい。実施例が異なるごとに100の桁を変えて、下2桁には対応する部材に同じ符号を用いることもよく見られるが、部材の数が大して多くないのに、符号の桁ばかりが多くなるのは避けた方がよい。図面が見づらくなるからである。

なお、米国特許のプラクティスでは、クレームに記載されたものは、全て図面に記載されていなければならないというルールがある。したがって米国に出願される可能性の高い出願においては、日本出願の時からそのルールにしたがった図面を作成しておくことが好ましい。すなわち、クレームされた変形例は全て図面に示しておく必要がある。本文中の言葉だけの内容は図面に示されていなくてもよいが、後からその変形例をクレームアップすることはできない。ただし、新規事項(new matter)でなく補正で追加できるものであれば問題はない。
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